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「これ、イヤだって言ったよね!」
「またお前はー。それについちゃ話し合っただろ? 『大人っぽい方がいいよね』ってお前も言ったじゃないか」
「口真似、やめてよ! 俺、そんな喋り方してない!」
「してるよ。今だって、『口真似、やめてよ!』 な? そっくりだろ?」
「違うってば!」
「そうだってば」「あのぉ。ここにいるんですがね、別の人間が」
やってられないというテルの声。あ という顔の二人。
「すみません、つい」
「『つい』でいちゃいちゃすんの、やめてもらえませんかね」
「そうですよー、大将よりジェイさんが目の毒で。色っぺぇし……あたっ!」
「あ、つい」
思わず蓮が叩いた洋一の頭をジェイが撫でた、
「ごめんね、洋一くん! 蓮! 謝ってよ!」
「はあ? お前、まさか洋一に」
「バカっ! そういうことしか考えないんだから、このスケベ蓮!」
慌てて咳払いが入る。イチだ。
「あの、お二人ともまさかその調子でやっていくんじゃないでしょうね?」
「今だけ。だってみんな知ってるわけだし」
「大将! のんのと源だってそんなあからさまじゃないですよ! やり過ぎ!」
正直イチもテルも洋一もいたたまれない。手伝いに来て何度こういう場面に遭遇していることか。
「今からそんなだと普通に出ちゃいますからね。極力控えてください!」
それでなくてもジェイは人目を惹く。今29歳。色気むんむんといったところだ。だから蓮は心配で堪らない。いっそ『夫婦だ!』と公言してしまいたい。蓮にはそのことにもう躊躇いが無い。だが『一般的には』という、珍しく控えめな親父っさんの言葉に止められていた。
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