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さらに壁を眺めると額縁が。
『食品営業許可証』『食品衛生管理 河野蓮司』『防火管理者 河野ジェローム』『調理師免許 河野蓮司』…………
「調理師免許、いつ取ったんですか!? あれ、学校出て実務経験無いと取れないでしょ!」
「詳しいな、田中。通信制もあるし土日の講義もあるんだ。後は企業秘密」
「あれだけ忙しかったのに……」
もう脱帽というしかない。
そんな中でジェイが次々と飲み物をテーブルに運ぶ。ビール、ウーロン茶。
「ジュースがいい人は言って」
「何があるの?」
「えっと、リンゴ、オレンジ、ジンジャーエール、グレープフルーツ。牛乳もあるよ!」
「……ジンジャーエールで」
「はい! マスター、ジンジャーエール、1つ!」
「バカ、それは料理じゃない」
みんなが笑い出した。ジェイの存在が大きい。
「それ、ここで聞けるんだな、ほっとしたよ!」
中山だ。
「相変わらず先輩はそういう感じだね」
「石尾くん! またそれ言うの?」
ちょっとむくれながら飲み物を運ぶ。なかなか手際がいい。
「料理、すぐ運ぶから先に乾杯しようよ!」
みんながグラスを掲げた。蓮もウーロン茶を。
「音頭は哲平、お前に頼む」
哲平の目が輝いた。
「では! 僭越ではございますが乾杯の音頭を取らせていただきます。乾杯!」
その後は大きな拍手に包まれた。
料理を出し始めると、『蓮ちゃん』の様子が一変した。
「ジェイ、前菜ご提供!」
「あいよ!」
「刺身お造り、ご提供!」
「あいよ。マスター、1卓、生ものダメな人いるから火を通したのお願い」
「あいよ!」「いいなぁ、こういう雰囲気……」
和田が言った時、入り口がカラリと開いた。
「よっ、来たよ」
「親父っさんだ…… イチさんたちも?」
野瀬の驚きの声。
「『反社会的勢力』の塊……」
「おぅ、花、俺にイチャモンか? 今日は個人で来てるんだ、大将も認めてる」
「親父っさん、奥に座敷用意したから」
「お! 済まねぇな。だが後でこっちに乱入するぞ」
「あいよ」
続いて大滝と役員御一行様。
「うわ、取締役とか……」
みんなが身を竦めた。
「おい、気を遣うな。この人たちには座敷に行ってもらう。ジェイ、ご案内!」
「はい! こちらへどうぞ!」
今さらながら蓮の会社での存在感を見せつけられる。
「父さん! 母さんも!」
「超愛さん! 夢さん!」
これには花も哲平もぶっ飛んだ。
「こんばんは、蓮ちゃん。花、最近エンジェルたちが来なくて寂しい……」
「父さん、泣くな!」
「はい」
「こ……蓮ちゃん、どうしてこの二人が?」
「内装のプランを相談されたんだよ、マイボーイ」
「みんないるんだから!」
「今日は無礼講だ。そうだね? 蓮ちゃん」
「親子喧嘩にはタッチしませんよ」
「お花を持ってきちゃいけないって言うから手ぶらで来てしまって」
夢さんは泣かんばかりだ。
「あなたが華ですよ、夢さん」
「ま!」
蓮の言葉にぽっと赤くなる夢さん。
(女キラーだったとは……)
蓮のするっと出た言葉に、全員がギョッとしている。
「もういいや! 誰が来てもいいから騒ごうぜ! 店の奢りなんだからさ!」
哲平が盛り上げ始めた。蓮の顔に笑顔が浮かぶ。
「そうだ! 楽しんでってくれ、今夜は金曜日だ!」
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