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「おぉい、弟たちよ」
「哲平さん?」
「人が見たらお前たち、『らぶらぶ』だって思うぞ」
ジェイは慌てて花から体を離した。
「違うよ、俺と花さんは」
「言わなくていい、俺に言い訳する必要なんて無い」
そばまで来た哲平は二人の肩に手を置いた。
「で、仲直り出来たか?」
「ケンカしてたわけじゃないから。そういう心配要らない」
「花、お前の悪いとこだ、さっきの。黙って相手から離れるな。突き放すんじゃない。離れんのなんかいつだって出来るんだぞ。自分から大事な相手を手離すな。これは兄貴としての説教だ」
コン! と頭を叩かれた。痛くないのに痛い。
「……兄さんのゲンコツって痛いね」
「だろ? 俺たちは3人兄弟なんだ。兄弟の間で何かわだかまりとか引っかかったら話そう。ジェイにも花にも俺にも男兄弟がいない。けどこうやって兄弟になれた。口を閉じるな、聞いて話せ。いいな?」
花は頭を下げた。
「ジェイ、改めてごめん。不安にさせた。哲平さんもごめん、説教ありがとう」
顔を上げて哲平を見た。
「長男だね、哲平さんは。腹が立ったりアホに見える時の方が圧倒的に多いけど、こんな時には頼りになる兄貴だと思うよ」
「なんか前半、変なこと仰いませんでしたか?」
「そう? 気がつかなかった」
ジェイは半泣き半笑い。
「さ、戻ろうか。さっきさ、感動したよ。花が出てった後河野、じゃない、蓮ちゃんがすぐにジェイに耳打ちしてジェイは飛び出してったろ? 愛だよなぁ。お前のこと、ホントに蓮ちゃんはよく見てるよな。マジ、羨ましいって思った」
暗くて良かったと思う。今赤くなっているのを自覚している。
ちょっと間が空いて、花がどうするのか見る。追いかけた時の考えるような顔は消えていた。自分を見ているジェイに気がついた花は、ジェイの肩に手を置いて歩き出した。
「散歩は終わり。俺、飲み直す。今日金曜だしな。マリエにも遅くなるって電話してあるし」
「店で? ウチの店で飲み直してくれるの!?」
「ばぁか、他の店に行くわけ無いだろ? 今度から飲むのはお前んとこだ。俺、常連になるって決めたから」
「俺も! さっきさ、蓮ちゃんの赤魚の煮つけ食って参った! 絶品だよな! お前、あんなの毎日食ってたのか?」
「うん。蓮は作ってくれる時にはあんまりインスタント使わないんだよ。1から作るんだ。気晴らしになるんだって」
「お前、贅沢な暮らししてたんだな!」
(哲平さん、ありがとう。迎えに来てくれたんだね)
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