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「じゃ、組のもんが出入りするのはだめか」
少々残念そうな顔をする。
「すみません、表にもそう表記します。ビジネス街なので商売の生き死にに関わります」
「そうだな、尤もだ」
「でも親父っさんたちはいいですよ。『三途川組』は困ります。『三途川家』なら大歓迎です!」
「いいのかい1?」
「もちろんですよ! だってスポンサーの一人じゃないですか」
蓮の言葉にすっかり浮足立ち、カレンダーにもオープン日に大きな印をつけさせた。
「オープンにはどうするって?」
「遅くても4月下旬には届くよう招待状の郵送を始めました。初日は招待客のみにします。結構お偉いさん方も招待するので、親父っさんが来てくださるならそれなりの格好でお願いします。あ、紋付き袴は勘弁してください。黒スーツも困ります」
「その辺は抜かりないよ」
今日の蓮はビジネスの話で来ているからちゃんとスーツでスポンサーと話す対応だ。R&Dの時と変わらない。
「特にセレモニーは考えていません」
「それはもったいなくねぇか?」
「正攻法で行きます。あまり下手に出たくありません」
「いいのかい、その姿勢で」
「はい。私の姿勢です。真っ向勝負で清廉潔白。大滝さんがくれた言葉はもう信条になってこびりついてますからね、変えるつもりはないんです」
「あの人は大きな人だねぇ。裏の社会でも立派にやって行ける」
蓮は笑い出した。
「そうかもしれない! 引退したら誘ってみちゃどうです? 親父っさんとなら合いそうだ」
「スポンサー同士、仲良くやって行けると思ってるよ」
「俺もそう思っています」
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