不機嫌

1/3
653人が本棚に入れています
本棚に追加
/282ページ

不機嫌

    花は機嫌が悪い。池沢も機嫌が悪い。そして、田中、尾高、広岡、野瀬、中山……  要するに誰もかれもが機嫌悪いのだ。 「おーい、仕事しようぜ」  やけに明るい哲平の声を花がキッと睨んだ。 「哲平さんはさ、頭来ないの?」 「なんでだよ。仕事上手く行ってるし、思ったより新人教育も上手く行ってるし。みんな何怒ってんの?」 「河野さんとジェイにだよ! 退職してそれっきり。引っ越しちゃうし携帯にさえ出ないって、これ意図的だよね!」 「いいじゃないか、少し遊んだって。あの二人は散々苦労してきたんだ、それくらいいいだろ? いつまで追っかけしてんだよ」 「そんなんじゃないよっ! 哲平さんって結構冷たいんだね、こんなに温度差感じたの初めてだ」  他の連中まで哲平からそっぽを向く。 「ちょっと待てよ。あのさ、確かにあの部長の後の俺って頼りになんないとは思うよ。でも仕事に手を抜く気も無いし、これからの展望だって持ってるんだ。みんなの言ってるのは、俺じゃダメってことか?」  腕組みしている哲平を見て、さすがにみんなも態度が悪かったと反省する。確かに哲平に八つ当たりすることじゃない。 「悪かった。お前が悪いわけじゃないのに。済まない」  田中が頭を下げ、みんなもそれに倣った。 「それにしても二人ともどうしちゃったんだろう……」  井上の声にみんなも自然と肩が落ちていく……   
/282ページ

最初のコメントを投稿しよう!