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不機嫌
花は機嫌が悪い。池沢も機嫌が悪い。そして、田中、尾高、広岡、野瀬、中山……
要するに誰もかれもが機嫌悪いのだ。
「おーい、仕事しようぜ」
やけに明るい哲平の声を花がキッと睨んだ。
「哲平さんはさ、頭来ないの?」
「なんでだよ。仕事上手く行ってるし、思ったより新人教育も上手く行ってるし。みんな何怒ってんの?」
「河野さんとジェイにだよ! 退職してそれっきり。引っ越しちゃうし携帯にさえ出ないって、これ意図的だよね!」
「いいじゃないか、少し遊んだって。あの二人は散々苦労してきたんだ、それくらいいいだろ? いつまで追っかけしてんだよ」
「そんなんじゃないよっ! 哲平さんって結構冷たいんだね、こんなに温度差感じたの初めてだ」
他の連中まで哲平からそっぽを向く。
「ちょっと待てよ。あのさ、確かにあの部長の後の俺って頼りになんないとは思うよ。でも仕事に手を抜く気も無いし、これからの展望だって持ってるんだ。みんなの言ってるのは、俺じゃダメってことか?」
腕組みしている哲平を見て、さすがにみんなも態度が悪かったと反省する。確かに哲平に八つ当たりすることじゃない。
「悪かった。お前が悪いわけじゃないのに。済まない」
田中が頭を下げ、みんなもそれに倣った。
「それにしても二人ともどうしちゃったんだろう……」
井上の声にみんなも自然と肩が落ちていく……
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