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さて、準備はどう？
夫婦の性生活はその後持ち直したようで、徐々に蓮は正常運転に移行しつつあった。その代わり、厄介な思いに三途川の面々は囚われている。朝から元気。にこにこ。溌溂。活気があっててきぱきと。蓮の満足した顔を見ると朝っぱらから気分が萎えてしまうのだ。
（夕べ…… わあああああああああ）
脳内で断固妄想拒否が湧き上がる、目の前のピシッとした蓮とにこやかなジェイを見て。なのに、勝手に軽やかな腰の動きを見るたびに顔が引き攣りそうになる。来る日も来る日も、蓮は元気だ。
（毎晩毎晩毎晩…… わあああああああああ）
だから親父っさんから「こいつを渡せ」と言われてみんな納得した。『松坂牛ステーキ５キロ』。
蓮は遠慮したが、「前祝いだそうです」とイチが言うと笑顔で受け取った。蓮は今日も元気だ。
形になってくると不思議なもんだ、我が子のように可愛くなってくる。Ｒ＆Ｄの時とは違う愛しさ。ジェイも同じらしい、我が子を持ったことのない二人は、今我が子を育て始めるような感覚を共有している。
目が覚めれば浮かぶのは内装の工夫。いつの間にかその話になる。最後にビデオを見たのはいつのことか。退職後、すぐに旅行に１週間出た。目的の無い１週間の旅は楽しかった。そして今は店にのめり込んでいる。
退職前から手はつけていたのだが、本格的にどっぷり浸かると、嵌った。今じゃ三途川の面々にしても楽しいひと時になっている。……アレを除けば。自分たちにもまるで我が子のようで親父っさん始め活き活きと手伝った。
最初親父っさんは組をあげての応援協力を、なんてのたまった。それを蓮やジェイが言うより早く、女将さんやイチたちが止めてくれた。
「開店前にヤクザが入り込むのはマズいですって！」
世の中は『反社会的勢力の排除』に力を入れている真っ最中。ＩＴ開発の契約書にもその言葉が出てくる。不動産を借りるのにさえ大きな支障が出る。
「そうか…… そりゃ仕方ねぇな、始まる前から大将たちの仕事にケチをつけちゃなんねぇ」
それで一件落着した。
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