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私は鉄格子の隅が石造りの壁になっている事に気付き、そこに身を隠して、男を待つ事にした。
僅かな幅ではあったが、私を隠すには十分な幅だ。男にとっては、私の姿が消えたように見える筈だ。
男の足音が近づく。
男は鉄格子の扉の前に立ち、慌てふためき、牢獄の中に走り込んでくる。
私は左脚を引っかけて、男を転ばせる。
男は呻き声を上げながらも、慌てて立ち上がろうとする。
男の顔面に前蹴りを叩き込む。
カウンターで決まり、男は弾け飛び、石の壁に身体をぶつけ、倒れ込む。
立ち上がろうとする男の背後に回り込み、ロープを首に巻きつけ、右足を首の所に当て、思いっきり絞め上げる。
男は不気味な濁った呻き声を上げながら、がっくりと項垂れ、身体から力が抜けきった。
助かった……。
最初はそれしか、言葉は出てこなかった。
このまま逃げようと思ったけど、自分がこの男にされた事が、頭の中に次々と鮮やかな映像となり、映画のシーンのように映し出されていく。
頭痛に襲われ、両手で頭を抑えるけど、一向に収まる気配がない。
頭の中に響くノイズが、酷くなっていく。
頭の中の映像の移り変わりが加速していき、思考回路がショートして、火花が飛び散り出す。
両脚がガクガクと震え出し、へたり込み、四つん這いになってしまう。
呼吸がやたらと荒々しくなる。
全身からねっとりした汗が噴き出す。
頭の中が世の中の全てを理解しきったような不思議な状況に陥る。
身体全体から力が抜けて行き、軽くなっていくような感覚。
ゆっくりと立ち上がり、心と身体に感じるは浮遊感。
私はロープで男の両手首を縛り上げ、天井の滑車にロープを通して、ハンドルの所に固定して、ハンドルを回して男を吊りあげる。
男は意識を取り戻し、呻き声を上げる。
「大人しくしろ!このボケ!」
男の股間を思いっきり蹴りあげる。男は絶叫をして、身体を仰け反らせる。
私は男に罵声を浴びせながら、拳と蹴りをひたすら叩き込み続け、サンドバックのように扱った。
男の声が弱くなり、身体も力が入っていないような状態になった。恐らく、吊っているから立っていられる状況だ。
私は一旦、牢獄を出る。建物の地下のように感じだ。
狭い通路を歩き、キッチンのようなスペースを見つけた。私はそこで包丁を見つけ、牢獄へと戻る。
包丁を翳し、笑みを浮かべて男に近づく。
男は首を左右に激しく振り、泣き喚く。男の顔を覆う黒い布を容赦なく剥がす。
涙と鼻水でグシャグシャになった、怪物のような醜悪な顔が露わになった。
男の顔に包丁を当て、ゆっくりと引く。包丁の刃が、すっと抜けるような感じで、男の頬を切り裂く。
男の頬はすぱっと切れ、鮮血が溢れ出す。
「イケ面になったよ。良かったね~」
私はそんな事を喋りながら、男の顔を切り刻んでいく。
男の泣き叫ぶ声が耳触りだったので、包丁の先端を口の中に押し込んだ。
もう一本の包丁を力任せに振り回し、飛び散る返り血を物ともせず、男の身体を滅多切りにした。
更に、包丁を男の身体に何度も突き刺す。
包丁が身体の奥へと喰い込む感覚が、温かい真綿のような緩やかな電流のように右手から身体全体に伝わってくる。
男は息絶えていた……。
私に切り刻まれ、深紅に染まった男を見つめた後、返り血に塗れた自分を見つめてみる。
身体は震えていたけど、気持ちは高揚していた。
突然、頭から股間にかけて、突き抜ける電撃のような衝撃!
身体がびく、びくと何度も痙攣を起こしたかのように震え、アソコが一気に熱くなる。
堪らない……。
太ももをゆっくりと伝う、どろりとした液体の生温かさに、全てが支配されていく。
包丁が右手から無造作に落ち、地面に突き刺さる。
私はヘラヘラと笑いながら、牢獄の中で天井を見つめ、立ち竦んでいた。
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