9cmでご容赦ください

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「……ハルくんのアホ」 鈍感、と言い捨てて、ぷいっと結衣(ゆい)が顔を背ける。その横顔は、暗くてもわかるほど赤い。 「え? ちょっと結衣(ゆい)サン?」 ためらいがちに呼びかける悠生(はるき)だが、口元はだんだんと笑みの形になる。もはや、にやけそうになるのを必死で耐えていた。 いつも三井(みつい)の話をしたら不機嫌になってたんは、が三井のことを好きやと思ったからなんや。 ──つまり、ヤキモチってことか。 『それは、がイヤやと思うけど』と苦笑いを浮かべた三井の真意を、いまさらながら理解する。 確かに、“恋敵(こいがたき)”やと思っている相手にマフラーの編み方を教えられたら嫌がるわ、と。 「……じゃあ、なんでオレの前で、マフラーを編もうとしとんや?」 普通は見つからんようにするもんやろ、と今度は別の疑問が頭をもたげる。
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