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「それはペルシャ絨毯か?」
棒針にぶら下がったウール100%の“布”を目にし、悠生は思わず額を押さえた。
編み目の細かさが特徴のペルシャ絨毯よろしく、それは一部の隙もなくギッチギチに編み込まれている。
「なんで、そんなことになったんや?」
はぁと大仰にため息をついてみせれば、二本の棒針を持った少女が、その大きな瞳に涙の粒を盛り上がらせた。
「だ、だって……」
アシンメトリーにカットされた前髪からのぞく眉を八の字にして、彼女は己が手元をのぞく。肩まで伸びた癖のない黒髪が、サラリと頬を撫でた。
「キレイに編みたかったんやもん」
「絨毯を?」
ちゃうってッ! という叫び声が、ふたりだけしかいない夕方の家庭科室に響く。その拍子に、大粒の涙が瞳からポロリとこぼれた。
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