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「……私が不器用なん、知ってるやろ」
不承不承といった様子で、結衣が口を開く。
「だから、マフラーが編めるようになるまで、ちゃんと見ててほしいんやって」
──なにが、“だから”なのだろうか。
首を傾げる悠生に、彼女がプクリと頬を膨らませた。
「来年は絶対に今年より上手く編めるようになるから、ハルくんには、その“伸び率”を評価してもらいたかったんや」
もちろん、再来年はもっと上手に編めるようになっとるはず! と彼女は拳を握る。
なるほど、“伸び率”というのは、ある意味、彼女自身の身の程をわきまえた現実的な評価基準のようだ。今年よりもできるようになった“次の年”の自分を見ていて欲しい、と。
裏を返せば、“ずっと一緒にいてほしい”という告白にも聞こえた。
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