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「ははは」
さっきまで悩んでいたことが、バカらしくさえ思えた。複雑にしているのは自分自身で、答えはひどくシンプルなものだった。
どうやら、悠生は結衣に片思いをし、結衣は悠生に片思いをしていたらしい。
「なあ、結衣……」
悠生は悪戯っぽい笑みを口元に浮かべて、彼女の耳朶に唇を寄せる。
「好きでもないコからマフラー渡されても困るけど、結衣がくれるんやったら、毎年でもオレはうれしい」
「ッ!」
ボンッと音が出そうな勢いで、結衣の顔が一瞬で真っ赤に染まる。耳の先まで赤い。
「結衣がくれるモノやったら、オレはなんでもええ」
その“ペルシャ絨毯”でもな、と投げ出された棒針にくっついたマフラーには到底なれそうにないウール100%の“布”を指差した。
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