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「うん。めっちゃ、すき」
こちらが恥ずかしくなるほど真っすぐに、結衣が答える。はっきりとした、ためらいなど微塵も感じさせない声。
「……あ、そ」
聞くんやなかった、と後悔したが、もう遅い。
──うん。めっちゃ、すき。
悠生は、なにか叫び出したい衝動をぐっと堪えて、編みかけのマフラーを棒針ごとスクールバッグに押しこんだ。
教科書やら弁当箱やらの隙間に無理やりそれをねじ込むと、乱暴にファスナーを閉める。
「正直、好きでもないコからもらったマフラーなんて、オレはいらんけどな」
言わなくてもいい嫌味が口を突いて出る。「そうなんや……」とつぶやいた結衣の声は小さく震え、その瞳には再び涙の粒が盛り上がった。
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