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「バイトあるから、オレ、行くわ」
目頭を擦る結衣から目を逸らし、悠生は逃げるように家庭科室を後にした。
このまま一緒にいたら、取り返しのつかないことを言ってしまいそうだ。
「もう家庭科室、閉めてええの?」
終わったん? と声をかけてきたのは家庭科部の部長の三井。「編み物をしたい」と言う結衣のためにクラスメイトである彼女に場所を提供してもらったのだ。
幼馴染とはいえ、お互いの家でふたりきりで練習するのはさすがに気が引けるし、学年が違うため、どちらかの教室で、というわけにもいかないだろう。
「いや、まだ、もうひとりおるんやけど、オレ、バイト行かなアカンから……」
ふーん、となにか言いたげな彼女の眼差しに、ばつの悪さを感じつつ悠生は廊下を歩き出す。
だが、すぐにくるりと向きやり、口を開いた。
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