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「なぁ、三井」
よかったら、アイツにマフラーの編み方、教えてやってくれへん?
逃げている、と言われたらその通りだ。だが、これ以上、結衣の好きな男のために、なにかをしてやる気にはなれなかった。
「え? 私が?」
予想外だったのか彼女が目を丸くする。少しばかりの沈黙の後、「それは、向こうがイヤやと思うけど……」と苦笑を浮かべた。
「こういうときは、女同士がええんとちゃう……」
そう思った悠生だが、なにかに気づき、ピタリと動きを止める。
「三井って……」
呼びかけたものの、わずかに逡巡する。これは問うべきか否か。
「なに?」
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