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白い軽自動車が走っていた。 すぐ後ろに黒のSUV。 軽の方は地味な感じで、SUVは派手にたくさんのパーツをつけている。 執拗に白を黒が追いかけていた。 おお、と思った。 今流行りのあおり運転ってやつだ。 対向車線を走っていた俺は、すぐにUターンし、2台を追いかける。 後ろからしばらく見ていたが、確実にあおり運転だった。 考えていた計画に変更が必要かもしれない。 変更というより改善だぜ、と思った。 俺がここにいる目的。 それは自分を殺すことだった。 俺も一応、人間なので殺人には違いない。 理想は大型トラックだった。 見通しの悪いカーブで対向車線に突っ込む。 トラックは大丈夫だが、俺はぐちゃぐちゃになるだろう。 自殺じゃなく事故死。 運転手には迷惑な話だが、もう何も構わない俺はそんなこと考えなかった。 勝手に1人で死ねばいいのだが、性格が悪いのか派手に死のうと思っていた。 しかも美香子の住む街で。 最低なやつだ。 でもそれを思いついた時から、その考えが捨てられなかった。 強迫観念ってやつだ。 それしかないと思ってしまった。 きっと病気のせいなんだろう。 やめよう、死ぬなら他人に迷惑をかけずにやろう、と何度思っても考えは戻ってしまう。 何故か、そうすることしかないと思い込んでいた。 そして、今。 目の前で悪名高いあおり運転が行われている。 ここだ、と思った。 他人に迷惑をかけて死のうと思っている俺が、他人に迷惑をかけている人間に迷惑をかけてやる。 ふざけ半分なのだろうが、その結果はどうなるのか。 思い知るがいい。 俺はバイクを加速させ強引に白と黒の間に割り込んだ。 黒が窓を開き、俺に罵声を浴びせた。 そして少し走っていると白は道の左に停まった。 黒はそのまま俺を追いかけ てくる。 標的は完全に変わったようだ。 俺がさらに加速するので、後ろからあおるには黒も加速せざるを得ない。 猛スピードで走るバイクと車。 さあ、行くぞ。 俺は全ブレーキを一気にかけた。 後輪が浮いた気がした。 その一瞬、俺は冷笑ともに後ろを振り返った。
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