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訓練の日々
旅することを決意した、絃と翡翠。
しかし、まだ未熟すぎるので、美澄から直接、訓練を受けていた――。
「もう少し、手元に意識を持って行って。今のままでは、札が途中で切れてしまいますよ」
「はい、おばあ様。……こうですか?」
「ええ。その調子です」
今日から訓練を始めて、あと二週間は旅に出られない。
ずっと訓練漬けの日々を送るのだ。
しかし、これも世界のため。
そう思うと、自然と集中して取り組めた。
訓練が終わったあとは、より世界についての知識を増やすため、
美澄からいろいろと教えてもらうことにした。
「そうですね……何からお話しましょうか」
美澄は二人にお茶とお菓子をすすめると、話し始めた。
「先日もいいましたが、妖術師には様々な種類が存在します。
我々のように、札を操る者もいれば……
あやかし――時にはケガレまでもを仲間とし、召喚して戦う者もいます。
そして、『獣術』と呼ばれる術を使う者も」
『獣術』。
初めて聞く言葉に、翡翠はお菓子を頬張りながら訊き返した。
「何ですか? それ」
「二人は、獣人と呼ばれる人々を知っていますか?
パッと見たところ、人間に似ていますが……
頭に獣耳を生やし、尻尾と牙を持つ者です」
「「いいえ、知りません」」
二人が声をそろえて言うと、美澄は苦笑して説明してくれた。
「『獣術』を使うのは、獣人だけです。
獣人特有の素早さと傷の回復力を活かした術となっています。
彼らは、人間をよく思っていないようですが……。
人間に助けられたり、恩がある獣人は、人間に味方してくれます。
――自分の身がどれだけ傷つこうとも。
獣人は、深い警戒力と忠誠心を持つ者なのです」
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