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「取り引き……?」
こてんと首をかしげる絃に、美澄は微笑みながら言う。
「あの集落には、とても珍しい果実が実ります。それを食べれば、
怪我や病気などもたちまちに治るのです。
集落を手放す時、それもあって、とても悩みましたよ……。
ですが、獣人たちが許可してくれるならば、うちの村にしか実らない
作物と交換したい。それが、取り引きです」
「〈獅子ノ瀬村〉にしか実らない物って……ヒュイの実のことですか?」
翡翠が横からひょこっと顔を出す。
ヒュイの実とは。
〈獅子ノ瀬村〉にしか実らない、特別な果実である。
その味は人によって感じ方が違うようで、甘かったり酸っぱかったり苦かったりなのだそう。
ヒュイの実は、食べた者の能力を一時的に上昇させる効果を持つ。
美澄はコクリと頷いた。
「その通りです。その取り引きが上手くいけば、ここ〈獅子ノ瀬村〉と
あの集落を合体させたいと思っています。
そうすれば、より多くの情報を共有出来る。あなたたちの旅にも
役立つと思うのですが……」
絃と翡翠は顔を見合わせると、深く頷いた。
「「分かりました、おばあ様」」
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