第1章 父の再婚

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俺は、梶原祐。 両親は離婚し、母親が俺と弟を引き取ってくれたけれど、離婚が成立した直後に発病し、余命僅かとなってしまった。弟は、6歳も下だし、母さんが死ぬことなど理解出来ていなかっただろう。中学校に上がったばかりの俺だって、混乱しているし衝撃的だ。頭で理解しようとしても、現実味がなかった。 「祐。あなたがいてくれて良かった。圭太のこと、ちゃんと面倒見るのよ。祐なら、大丈夫。しっかりしてるし、悪いことが何かってことも、わかってる。これから、お父さんにあなた達を引き取ってもらおうと思う。自分勝手で我儘で、祐みたいに善悪の区別なんか出来ない自己中な人だけど、それでも父親として生活のことは面倒みてくれるはず。それから、もし何かあったら…祥子さんを頼って。あの人なら…祐のこと守ってくれるかもしれない」 薄暗い病室で、母さんは息苦しそうなか細い呼吸の合間に、そう言って俺の手を握りしめた。祥子さんとは、先日この病室で初めて会った。とても綺麗で、瞳がキラキラしている女性だった。母さんのことを、とても心配そうに見てくれていた。会ったのは、その日だけだったけれど。
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