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高杜凪咲さんより
あくまで「落書き帳」であり、主体は私のつもりだったのですが、あまりのクオリティの高さに自慢せずにはいられませんでした(*థ౪థ)ぐふふ
以前捧げたイラストに、凪さんがストーリーを付けてくれたのです!!!( #●´艸`)プププ∮+゚
個人的推しカップルのイチャコラが公式で発表されてめちゃんこハッピーです(☝ ՞ਊ ՞)☝
シーントーク:(出演:未汝・牧(未汝の父)・華菜(未汝の母)・りな)
場面設定:結婚前夜の談話室
牧「いつの間にやら、未汝も大人になったな」
華菜「そうねぇ。いつも元気いっぱいで、りなちゃんの問題集攻めに遭わないように、テストの点数をいかに誤魔化せるかをいっつも考えてたわよね。それが、こんなことになるなんて」
未汝「ほんと。当時の私が聞いたら、きっとびっくりすると思うんだよね。選ぶ人間違えてるよ、未来の私!! って」
くすりと笑う未汝に、両親も目元を和らげる。
未汝「でもりなちゃん、何だかんだ言って私の面倒、ずっと見続けてくれてたし、人を見下してるようだけど、あれでいて仕事も人一倍頑張ってるしね。本当は、もうちょっと仕事減らして寝て欲しいんだけど」
牧「さすがに繁忙期の約1週間無睡眠は駄目だよな。あいつ、子供の頃から集中すると寝食忘れるから・・・」
華菜「そうねぇ。それで休日となると図書館や資料庫の問題集の並んだ棚の前で、幸せそうにしてるのよね。この子、ちょっと大丈夫かしらと心配してたんだけど・・・」
未汝「そうそう。それで極度の女嫌いで、廊下を歩くにも女の子の姿を見るや通る道を変える程の徹底ぶり。近づけば、今にも凍らされそうな目を向けられて、氷柱を投げるが如く「何か用ですか」と冷たい声で問われる」
華菜「未汝に女嫌いだってバレないように必死に隠して教育係兼ボディガードしてたりなちゃん、面白かったわよ」
牧「しれっとした顔で仕事こなしてたよな。それが徐々に氷が溶けるように態度が軟化して。それが一年経った頃。ほら、未汝が高校受験に合格した後、あいつが何か合格祝いをしたいと相談してきたことがあっただろう?」
華菜「あったわね。併せて、未沙達の結婚祝いの舞踏会で社交界デビューさせるなら、それにちなんだモノがいいかと思うとも言って。本当に、天と地がひっくり返るかと思うぐらい驚いたわ」
その時に、りなが未汝に何も言わず贈った、王家の紋章である竜蘭を象った髪飾りと、竜華燕国の徽章を模した鈴蘭のネックレスは、未汝が重要な場へ出る時には必ず身に付けた為、マスコミの間では様々な憶測がなされていた。
牧「俺、夢を見ているかと思ったぞ。それまでのりなときたら、ことあるごとに「結婚しなくてはならないという法律はありませんので」なんて言い続けてたから、俺はそういう法律を作れないか考えてたんだからな」
華菜「よく文(神官の文花のこと)に、そんな人権を無視した法律、作らないで下さいねって止められてたわよね、牧」
牧「そんなこと言うなら、りなの女嫌いを治す手立てを何か考えてくれと俺は本気で思ってたけどな」
華菜「結婚することだけが、人が幸せになれる方法ではありませんよって諭されてたわよね」
牧「そうは言っても、あいつの天才的頭脳を持つ遺伝子を後世に残さないのは国としても損失だし、それに何より、あいつが自分の子供を抱いて笑う姿を見てみたかったんだ。・・・子供の頃に地下牢に放り込まれて、拷問され続ける原因を作ったのは自分だからと己を責め続ける、そんなあいつが幸せに笑う姿が見られるのを、ずっと願っていたんだから」
そう口にする父の牧の目にも、「そうね」と頷く母の華菜の目にも、うっすらと涙が浮かぶ。
この両親は、不思議な力を突如発動させたりなとその家族が、罪もないのに地下牢に放り込まれたことを受けて、当時の国王をその座から引きずり降ろす為に事実上の王位簒奪をした人物だ。どうやらりな達の両親は先に釈放されたようだが、子供達はそうはいかなかった。そして拷問まがいな人体実験を繰り返されて、牧が即位してすぐ、その式典を抜け出して子供達を助け出した時には、心は凍り付き、その目はガラス玉のように何の感情も映すことなく、まるで生き人形のような状態になっていたという。
そんな兄弟達が成長し、普通に感情を示して笑うようになった彼らを両親がどんな思いで見守ってきたのか。そこは察するに余りあるだろう。
未汝「お父さんもお母さんも、それ、私に孫を早く見せろってせっついてる自覚、ある?」
くすりと笑って言うと、牧も華菜も一瞬目をぱちくりしてから、ふっと優しい顔をして笑った。
牧「ああ、せっついてるぞ。だから早く、孫の顔を見せてくれ。未汝」
未汝「気が早いなぁ。結婚式、明日なんだけど。暫く新婚さん生活満喫させてよね」
華菜「満喫、出来るかしらねぇ? りなちゃん、仕事仕事でいつも通りかもしれないわよ?」
未汝「そこはお父さん、りなちゃんの上司でしょ? 早く帰してよね」
牧「努力はしよう。それで孫の顔が見られるならな」
ニヤリと笑う父に、未汝が肩を竦める。
未汝「授かりものなんだから、私の努力じゃどうにもならないわよ」
ガチャリと扉が開いて、りなが顔を出した。いつも通り、問題集を手に持っている。
りな「ここにいたんですか。自室にいないから、どこへ行ったのかと探しましたよ」
未汝「探してたわりに、問題集漁ってきたみたいじゃない?」
りな「図書館にも探しに行ったので、ついでに。眺めていたら気になったので」
未汝「私、問題集に負けたのか・・・」
華菜「牧、これは前途多難な気がするわよ? 私」
牧「新婚生活の弊害になりそうな問題は、仕事だけじゃなかったか」
りな「何の話です? とりあえず未汝、さっさと休みますよ。明日は寝坊するわけにいかないんですから」
未汝「はいはい。寝坊するわけにはいかないわよね? だからその問題集、没収するから」
ていっとその手に抱えられた問題集を没収すると、りなが眉を寄せる。
りな「貴女と違って僕は元々ショートスリーパーですから、別に問題ないんですが。予定のある日に寝坊することもありませんし」
未汝「自分の結婚式に、目の下に隈を作って出るつもり!? ほんとに、何で勉強と仕事以外はそう駄目駄目なのよ。もうっ!! ほら、今日は早く寝る!! 明日大変なんだからっ!!」
華菜「そうね。明日は忙しいだろうから、今日はもう休んだ方がいいわ、りなちゃん」
牧「そうだな。明日はお前達が主役なんだ。眠たそうな顔をして、バージンロードを歩かせるわけにはいかない」
りなはちょっと不服そうな顔をしたが、そこは「分かりました」と素直に頷いた。
りなと連れ立って自室へ戻ろうとした未汝は、部屋を出る直前に振り返って、両親に目を向ける。
未汝「お父さん、お母さん。その、ここまで育ててくれてありがとう」
照れ臭くてそんな言い方しか出来ない未汝に、両親は温かい目を向けて苦笑した。
牧「幸せになれ、未汝」
華菜「明日の花嫁姿、楽しみにしてるわね」
未汝「うん。おやすみなさい」
牧「ああ、おやすみ」
パタンと扉を閉めると、先に部屋を出ていたりなが柔らかい目を向けてそこに立っている。未汝の心情を察したかのように何も言わず、そっと頭を撫でた。この行動、架名ちゃんの真似よね? と苦笑いしそうになりながら浮かぶ涙を服の袖で拭うと、未汝はりなと共に自室へと戻るのだった。
ピピピピピと、目覚ましの音が鳴る。
あれ? 結婚式なら礼拝堂の鐘の音が聞こえなきゃ駄目なのにと寝惚けた頭で思うと、りなの声がすぐ傍で聞こえた。
りな「未汝姫。今日は朝学習するって、昨日ご自分で仰ったんでしょう? だから昨晩は早く切り上げたというのに、いつまで経っても起きていらっしゃらないから様子を見に来てみれば・・・・・・。早く起きて下さい。勉強する時間が無くなりますよ」
未汝「勉強・・・・・・?」
―― あれ? 結婚式は?
寝惚けた頭でそう思いながら渋々目を開けると、りなが早くしろと言わんばかりに冷たい眼差しで見下ろしてくる。
りな「それから、さっきそこの机の上で見つけたんですが、この小テスト8点って何です? 僕、これ見せて頂いた記憶がないんですが?」
未汝「・・・・・・見たこと、忘れたんじゃないの?」
まずい、どうやって隠そうかと眺めながら悩んで、そのまま置きっぱなしにして寝ちゃったことを思い出すと、未汝の寝起きの頭が急速に覚醒し始めた。
ちなみに布団の外からは、未汝の目をぱっちりと開かせようとするかの如く、冷たい冷気が忍び寄ってきている。誰がこの冷気を発しているかは、言うまでもない。
りな「僕が? そんなわけないでしょう? 何ならこの1年間の貴女のテスト成績、通知表の評価と苦手な単元も含めて、全て諳んじてご覧に入れますが?」
未汝「なっ・・・そんな誰の得にもならないこと覚えてないで、もっと違う皆の役に立つことにその記憶力活用してよ!!」
りな「仕事で散々国には貢献していますから、僕が個人的に何を覚えていようが文句を言われる筋合いはありません」
ほんとに、朝から何て嫌味な奴だと、未汝はじとっとした目をりなに向けた。りなはその目にたじろぐような様子はもちろん微塵もなく、さらりと流されて話を続ける。
りな「こうしている時間も無駄なので、早く起きて身支度して下さい。学習室で待っていますから」
未汝「・・・・・・無駄。あのねりなちゃん、世の中無駄なことなんてっ!!」
りな「無駄です。さっさとして下さい。問題集、倍積みますよ」
未汝「そういう脅しは卑怯だと思う!!」
りな「勝てば官軍です。卑怯だろうが姑息だろうが、勝てばそれは立派な戦術として後世に語り継がれるんですよ」
立派なものじゃないから、卑怯とか姑息とか言われるんじゃないのだろうか。
そう思いながらも言い返せない未汝を見やって、「待ってますから早くして下さいね」と言って部屋を出ていくりなをベッドの中から見送ると、未汝は心の中で叫んだ。
―― 未来の私!! まさかないと思うけど、結婚相手の人選、絶対間違えたら駄目だかんね!!
あの夢はバクにでも喰わせて完全消去してやるんだから!! と、未汝は朝から誓うのだった。
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