渇き

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ホテルのベッドは好きだ。 いつ来ても清潔だし汚したって罪悪感もそれほど感じず、何も考えなくてすむ場所。 鈍った思考回路と気怠い身体に抗うことなく、湿っぽい吐息が小さく空いた唇から漏れる。 そのうつ伏せになった背中に隙間なく密着してきた男はそっと俺の耳元で囁く。 「もういっかい、しない?」 元気だねぇと思いながら返事の代わりに頭を上げ唇を重ねた。 同時にゆるゆると俺の腰を厭らしく撫でる手が上へと上がっていく。 アイシテル。なんて言われた気がしたけど そんなものは聞いたところで何も生まないのだからそれ以上聞こえないようにわざとさっきより喘ぎを大きくすれば相手は嬉しそうな顔をする。男ってやっぱりバカだなと心の中で嘲笑った。 コンプレックスだった外見が武器になると気付いたのはいつ頃だろう。 母親に似た中性的な顔立ちも小柄で細身の体型も、それなりに使えばそれなりのものになれる事を知った。 「いつ見てもユウは細くて白いよね」 行為が終わりベッドサイドに座り俺を眺めながらスーツを着る男……えっと、あ、タムラさん。 数分前までどろりと溶けるほどの熱っぽさを瞳の奥に宿していたのにシャツのボタンひとつひとつをとめる仕草がまるでそれを隠していくかの様に封じられていく。 ベッドから起き上がってその背中に寄り添うように抱きついた。
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