渇き

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「あのさ、何かあったなら聞く…」 「分かってる、行くってそのうち」 「そのうちって…まぁ、うん待ってるわ」 優しい声色で発された言葉を最後まで言い切らないうちに言葉をかぶせ、再び瞼を閉じた俺を見て説得も無理だろうと思ったのか肩にポンと手を置いた後気配が遠のいてドアの閉まる音が聞こえる。 壁に掛けてある制服に目をやれば無性に嫌気がさす、左手首を少し伸びた爪で軽く引っ掻いた。 まるで世界の全てに拒否反応を起こしているみたいに、脳が考えるのをやめたがるかのように、小さな頭痛が止まらない。 その時ピコン、と無機質な音が鳴る。 はっとしてすぐ隣を見ればスマホの着信音だった。 枕に顔を押し付けて大きく息を吐きスマホへと手を伸ばす。 ユウくん今日暇? 奢るからご飯行こう 虚ろな目をブルーライトが照らす。 この人お金出してくれるのは良いけど、ねちっこいんだよな色々。 ご飯行こうだって、だけじゃ済まない癖に。ウケる。 ごめん。明日学校あるんだよね。 送信ボタンを押そうとして指が止まった。 『何かあったなら』 あいつの声が脳内でリフレインする。 特にあるわけでもない、ただ、普通の生活に呼吸が上手くいかないんだ。 心の中で抑えている全てがいつか爆発しそうで、いっそ爆発したい、壊れてしまいたいと願っても上手く壊れられない。 入力した文字を消して新しく打ち込んでいく、自分の中身が空っぽになっていく音がする。 「……寒いな」 ご飯より、もっと楽しい事したい。 次に押した送信ボタンに迷いはなかった。
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