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スノーマフラー
年の瀬も近い真冬の夜、音もなく深々と降り積もる真白い雪は町を白粉でまぶした花嫁の顔のように白く染めた。
一人の少年が早朝の全身を芯から冷やすような寒さに震えながら目を覚まし、窓の外より雪化粧のされた自らの町を眺めた。
こう寒くては外に出る気にもなれない。少年は一日を家で過ごそうと決意した。
ところが、世の中はそんなに甘くない。少年の母親が無情にも「家の掃除をするから外に遊びに行きなさい」と宣告する。少年は寒いから嫌だと全力の拒否をするが、少年が亀のようにすっぽりと入り込んでいた炬燵はポイポイと剥がされてしまう。
少年はなんともうらぶれたような気持ちで仕方なく外に出るのであった。シャツにセーターにダウンジャケットにマフラーに手袋にニット帽の完璧な防寒装備を纏っても寒いものは寒い。
こんな寒空の下に放り出すなんて母親は鬼婆か何かか! そう思いながら雪化粧のされたアスファルトをジャリジャリと言った音を出しながら踏みしめ歩く。
近所の公園では近所の腕白小僧達が雪合戦に興じていた。少年はそれを目の前に降り積もった雪と同じような冷ややかな目線で眺める。こんな冷たい中で雪玉をぶつけ合うことの何が面白いのだろうか、バカバカしい。少年は斜に構えた性格をしており、子供っぽい遊びが嫌いであった。そもそも入学式以降、誰とも話していないし、話したことがない。
休み時間では一人で何か本を読むのみ、特に何処かのグループに所属もしていない。クラスメイトからも誰とも話さない変な奴の扱いを受けていた。
当然「いーれーてー」などと、言うはずもない。
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