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少年は暇を持て余し、寒さで身を震わせていた。このまま公園にいても仕方がないとして家に戻ることにした。外出時間にして一時間を回るか回らないかの極めて短い外出である。これでは当然掃除も終わる訳がない。母親も掃除機で床の埃を吸い取りながら「もう少し外に行ってなさい!」と言う始末。少年は仕方がないので家の前で待つことにした。
少年は寒さに震えながら掃除が終わるのを待つが、家の中から聞こえてくる掃除機の音は止む気配がない、時折、けたたましい掃除機の音が止み「終わったか?」とテンションこそ上がるが、ただ部屋移動のために掃除機を止めただけで、数秒後には再び音が鳴り響き、少年はガックリとする。
こうも暇な上に寒くてはどうしようもない。少年は暇潰しのつもりで雪だるまを作ることにした。ただ、何となく作ろうと思っただけである。
よいしょ
よいしょ
よいしょ
少年は野球ボール程の雪玉を作り、地面にジグザグに転がし、下玉を作った。少年の臍の高さになるまでの大きさである。
よいしょ
よいしょ
次に上玉を作った。作り方は下玉と同じで小さな雪玉を地面に転がして、下玉の四分の三程の大きさにするだけである。
上玉と下玉が出来た。少年は下玉の上に上玉をラグビーのタッチダウンのように力強く乗せた。上下の接合部がグラグラと揺れる…… これでは不安定で首の皮一枚で繋がっていると変わりがない。少年は接合部に雪を接着剤のように詰め込んだ。接合部に雪が詰め込まれたことで雪だるまに首が出来た。
小さな雪玉をジグザクに転がして作った雪だるまのせいか、凸凹と形が歪つな上に土まで付着している。少年はせめて綺麗にしてやらないと可哀想かと思い、雪かきスコップを家から持ち出し、形を整え、土のついた部分を払った。
さて、後は目鼻口だ。少年は手頃なものを周りから探した。目はその辺りの石ころ、鼻は少年が嫌いな人参(こっそり台所に忍び込み窃盗ってやった。これでシチューから人参が消えたら万々歳だ)口は庭に生えた名も知らぬ枯れ木をポキリと、ついでに眉毛の分もポキリポキリ。
目鼻口が出来るだけでシミュラクラ現象が発生するのか、一気に人の顔に見えてくる。これだけで先程までのノッペラボウと違い一気に愛着が湧いてきた。最後にバケツの帽子を乗せて出来上がり! 少年は自分でも見事な雪だるまが出来たとしてパチパチパチと拍手を叩いた。すると、少年に話しかけてくる声が聞こえてきた。
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