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「じゃ、次は手だ。似たような長さの手を二本ぶっさしてくれ」
このわがままさんめ。少年は家の平垣沿いに落ちていた枯れ枝を二本拾い上げてブスリと深く差し込む。
「よし、これで手が出来たぞ。硬いけど無いよりマシだ」
折角要望通りに手をつけてやったのになんてわがままなやつだ。少年は最後に玄関脇に置かれていたミニバケツを拾い上げ、タッチダウンのように雪だるまの頭に叩きつけ、帽子とした。
「おう、帽子まで付けてくれるのか。ありがたい」
「サービスだよ。ところで、君は誰だい?」
「見ての通り、雪だるまだ」
「見ればわかるよ! どうして喋れるのか教えてよ!」
「お前が俺の頭に枝の口をつけたからだよ。ついでに言うと、石ころの目を埋め込んでお前の顔が見えるようになったし、人参の鼻をつけたら匂いもわかるようになった」
理由の説明になっていない。だが、雪だるま自身も理由はよくわからないのでこうとしか説明のしようがない。
こんな絵本みたいな御伽噺の存在がいるわけがない。少年はこの冬の寒さで頭がキーンとしているせいでどうかしたのだろうと思い、家の中に入った。すると、タイミングよく掃除が終わっていたので、一目散に炬燵の中に潜り込んだ。
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