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二人は公園についた。雪だるまは転がってきたせいか僅かに下玉を大きくし、少年の背を超える大きさとなっていた。
「あっという間に背、抜かれちゃったね」
「もっとぐるぐる回って、俺の下に穴でも掘ってかまくらでも作るか?」
「めんどくさい」
公園は雪で小高い丘が出来ていた。前までそこで誰かが遊んでいたのか橇跡が出来ており、その終点には忘れていったと思われる子ども用の橇が転がっていた。
「橇、乗ろうぜ?」
「え? 君を乗せるの?」
「俺はお前の横で転がるだけだよ。乗るのはお前だけだよ」
少年は橇に乗り、雪の小高い丘を滑り降りた。その横を雪だるまが下玉を転がしながら並走する。
「ひゃほーッ!」
少年は笑顔を見せこれまでにないような声を上げながら橇にしがみつく。何だ、きちんと笑えるんじゃないか。雪だるまは先程までの仏頂面を見て「こいつ、喜怒哀楽の喜と楽が欠落してるんじゃないか」と心配していたのだが、少年の笑顔を見て安心するのであった。
何回かこれを繰り返しているうちに雪だるまは雪で隠れて見えなかった鉄棒の柱に衝突し、下玉を破砕してしまった。上玉(頭)はひゅうううと音を立てながら、柔らかい雪にずぼっとめり込んでしまった。
「大丈夫?」
少年は雪だるまの上玉を拾い上げた。帽子のミニバケツはどこか何処かへと吹き飛び消えてしまった。多分、柔らかい雪の中に消えてしまっただろう。
「ちょっと、調子に乗っちまったな。悪いんだけど、また下玉作ってくれないか」
世話がかかるなぁ…… 少年は再び下玉の作成に取り掛かった。
よいしょ
よいしょ
よいしょ
ジグザクと雪玉を動かし下玉を作る少年。前のものと同じ大きさになったところで少年はベンチの上に置いていた上玉を下玉の上に乗せた。
「ぷはーっ! 死にかけたぜ」
「死にかけるとかあるんだ……」
少年は上玉と下玉の接続部に雪を埋め込んだ。すると、ミニバケツの帽子が無いことに今更気がつくのであった。
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