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「帽子…… 無くなったね……」
「この雪の中探すのもなぁ」
「分かった。僕のニット帽あげるよ」
少年は雪だるまの頭に自分が被るニット帽を被せた。
「お前が寒いだろ」
「いや、いいからいいから。あとついでにこれ」
少年は首にかけていた毛糸のマフラーを雪だるまにかけた。
「お、お前……」
「僕、体動かして体が温かくなっちゃった。あげるよ」
「俺、雪だるまだから冷たいのが普通なんだけどな」
「いーからいーから」
すると、親子連れが公園に入ってきた。子供の方は少年と同い年ぐらいである。
少年はそれを見て飼い主が客人を連れてきて隠れる猫のような素早い動きでそさくさと茂みの裏に隠れてしまう。雪だるまはいつものように不動の構えを取り、ただの雪だるまのフリをした。
「おや、こんなところこんな立派な雪だるまが」
「さっきまでなかったよね」
「本当に立派だな。マフラーに帽子まで被せてもらって、この雪だるまは幸せものだなぁ」
「お父さん、そんなことより橇は?」
「ああ、どこだったかな……」
少年が先程まで使っていた橇はこの親子の忘れ物だった。彼らは橇を拾い、さっさと公園を後にした。それを確認した雪だるまはコロコロと転がり、少年の隠れる茂みへと向かう。
「どうしたんだよ」
「うん…… なんか知らないけど、人が怖いんだよね」
「そうか、お前人見知りが激しいもんな」
「うん……」
「さっきの親子連れの子供の方、お前と同い年だろ?」
「うん、同じクラス」
「声、かけたらどうだ?」
「僕から声かけるの…… 怖い……」
生まれついての人見知りが抜けないのは仕方ないか。雪だるまはこれ以上少年に何も言わずに少年と共に帰路に就いた。
少年が家に入ろうとした時、雪だるまが声をかける。
「おい、帽子とマフラー、そのままでいいのか?」
「このままじゃ、寒いでしょ? そのまんまでいいよ」
「そうか。済まないな」
「じゃ、また明日遊ぼうね」
「分かった。明日は二人で昨日の公園で徒競走でもしような」
「うん! 負けないよ!」
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