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鬼を発見
「――何だろう。俺の家の前に金色の小さなモフモフがいる。い、犬かな……?」
残業を終え、今仕方山奥にある家へ帰宅したばかりの俺、仙波柊は自身の家の前で光る金色の何かに目を凝らしていた。
迷い犬……かな?
服着てるし。
でもこんな田舎に、金色の血統書付きの犬を飼ってた人っていたっけな。
でもあの大きさ、俺の実家で飼ってたチワワくらいの大きさだよな。
ここは田舎も田舎。
山奥で最寄りのバス停までまず徒歩15分。そこから会社がある最寄りの駅まで45分弱。隣り近所まで歩いて15分。若者がほぼいないこの集落、回覧板が回ってくるのもかなりの時間を要するくらいの僻地だ。
社会人一年目の俺は、入社早々会社の辞令で今まで聞いたことも無いようなド田舎の僻地へ勤務を命じられた。新人の間、皆地方にある支社へ勤務するよう本社からの指示が出てはいたが、まさか自分がこんなにも山奥のド田舎へ配属されるとは思っても見なかったのだ。
元々、東京生まれ東京育ち。五人家族の三人姉弟の末っ子で寂しがり屋の俺が、社会のコミュニティとも近所とも断然されたこんな山奥の平屋にたった独り。
本当は支社がある最寄り駅付近にアパートを借りたかったが、条件に見合う場所は既にどこも埋まっており不動産屋に唯一空いている物件が山奥のココだけだ、と紹介された。
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