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「シュウー、どうしたの?」
無邪気な口調とは裏腹に、心地好い低い重厚な声が俺の耳を擽る。
マズい。
ドキドキする。
全てが人間離れした美貌と体躯、声を併せ持つ鬼月に、この頃の俺は親心では無く違う感情が擡げて来ていることを薄々感じ始めていた。
「どうしもしない。仕事が疲れただけ」
そんな自身に自嘲した俺は、わざと不貞腐れたフリを見せる。
あまり懐かれ過ぎると、子離れ……では無く、鬼離れできなくなってしまうからな。
そうだ、丁度今が良いタイミングだ。
今夜から別々に入浴することを提案しよう。
善は急げ。
名案を思い付いた俺は、早速諭す様に鬼月へと口を開いた。
「鬼月、あのな。そこへ取り敢えず座れ」
「なぁに?」
スカイブルーの瞳をビー玉の様にキラキラと輝かせながら、言われた通りそこへ正座し、俺のことを見つめる。
無邪気さが宿るその透き通った綺麗な瞳に罪は無い。
俺は鬼月の育ての親で、鬼月は俺の子どもの様なもので――。
僅か半年ではあるが、俺は鬼月のことを手塩にかけた大事な可愛い我が子の様に感じていた。
だがこの頃、取り返しの付かない感情を鬼月へと持ち始めてきている。
“男”を妙に意識したり、ドキドキしたり――。
相手は人の形をしているが、はっきりと“人間”だとは言っていない。
例え同じ人間だったとしても、俺と同じ下半身に雄マークを持つ者だ。
益々、このまま“男”を意識したりドキドキしたりするのは非常に不味いの一言に尽きる。
距離を置こう。
そう判断した俺は、言葉を続けた。
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