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「俺は今日、仕事を頑張って疲れている。風呂は一人でゆっくり入りたい。だから鬼月、お前も今日から一人で入れ」
心を鬼にして俺は言い放つ。少しでも気を緩めると、その美貌に弱い俺は親バカの如く何でも許してしまいそうだったからだ。
すると、鬼月はこの世の終わりであるかの様な、絶望にも似たもの悲しい表情を浮かべていた。
がっくりと大きく項垂れた様子の鬼月を見ると、俺の心まで苦しくなってしまう。
「……何で一緒にお風呂、ダメなの?」
甘えた口調で鬼月は俺へと懇願する。
今流行りの俳優も目じゃない程の美貌を持つ鬼月は、小鬼どころか小悪魔的能力を遺憾無く発揮していた。
「オレ、シュウにカラダを泡あわで綺麗にしてもらうの大好きなのに」
一生懸命頬を膨らませて訴える可愛いらしい鬼月に、つい俺は決意を覆そうとしてしまう。
石鹸のこと、“泡あわ”だって。
ホント、鬼月のヤツ……身体は大人なだけど中身はまだ子どもだな。
鬼月の発言を微笑ましく感じた俺は、情に絆され苦笑する。
結局俺は、鬼月には甘いんだ。
“親バカ”ならぬ“鬼バカ”、だからであろうか。
それとも、その男としてパーフェクト過ぎる美貌が俺にノーと言わせないのだろうか。
「――鬼月、一緒に入ろうか」
愛情が勝っても簡単には拭えない羞恥心から、俺は今にも消え入りそうな声で鬼月へとそう告げたのだった。
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