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「さて、力も手に入ったことだし、早速神々との戦いとやらに赴いてみるかね♪」 3mを超える大槍を軽々振り回し、準備運動をするギル。 「いや、その必要は無いよ。 必要がある際には“任務”としてこちらから要請する。 あと、堕天使は準備運動も必要無いよ?キミ達の肉体は既に死んでいる。その体を動かすのは“魔力”だ。 運動をすればその分魔力が減って不利になると思うな~?」 「何だい、かったるいな…」 「だが準備運動は必要無くても戦闘訓練は必要だね? ギル君は既にしてしまっているが、これから武器の“錬成”方法を教える。 大丈夫、簡単さ☆ まず胸に手を当てて目を瞑る。次に魔力と作りたい武器のイメージを込める。簡単だろう?☆」 巨大なハンマーを錬成するディード。鉄扇を錬成するコトノハ。ガトリング砲を錬成するカレン。ライフルを錬成するアンジェラ。 「…。」 “武器”と聞いてイメージ出来たのは剣だった。 胸に手を当て、目を瞑り、胸から武器を取り出す。 「銃…剣…?」 所謂バスターソードと呼ばれる部類の刀身にライフルかバズーカのような砲身が付いた武器だった。 「ウンウン♪ルシファー=ゼロにしてはマトモな武器を作り出したね。生前はどんな出自だったのかなー。」 顔芸で詰め寄るロキ。 「…なぁ、ロキ様そろそろ聞いても良いだろうか?」 「何だいディード君?♪」 「ルシファー=ゼロとは何だ?彼は何か特別な堕天使なのか?」 「ンー、特別と言えば特別だね。 有り体に言ってしまえば生前の記憶を持たず転生した堕天使をルシファー=ゼロと呼んでいる。たまにいるんだよ♪」 「つまり記憶喪失?」 「つまらなくても記憶喪失さ?」 「何ぃ!?記憶喪失ぅ!?」 とギル。 「記憶喪失…ほほう、興味深い。どんな気分なんだ?」 とコトノハ。分からないことだらけで困っていると真面目に答えるゼロ。ふむ、それもそうかと納得するコトノハ。 「大丈夫なのか?そんな奴を戦場に出して?」 とディード。 「その為の戦闘訓練さ? 大体キミ達だって神々や天使と戦った経験は無いだろう?」 「そうだな。」 とギル。 「で?どうやるんだ、その戦闘訓練ってのは?」 「待ちたまえ。」 パラパラと本をめくるロキ。やがてある文章を指でなぞった。 すると、本からまた本が飛び出して来た… コトノハ「これは…ラジエルの書?」 「の、模造品だね。キミ達用だ。魔力は無いが、そこは注ぎ込んでやればラジエルの書と大体同じことが出来る。 試しにゼロ、扱ってみたまえ。」 皆がゼロに注目する。 今すべきことは…そう、戦闘訓練だ。そう思った瞬間、指が勝手にページをめくり出し、文章をなぞった。 ──刹那、ゼロを含んだ6人が広場から消失 した。 「さぁ始まりだ。行ってらっしゃい♪我が子達☆」 ──そこは闇のような空間だった。まるで紫と黒の絵の具をぶち撒けたような。 …尤も、記憶喪失であるゼロの抱いた印象はただただ不気味な空間、と言った程度であったが。 「アーアー、聞こえるかい我が子達?」 「バッチリ聞こえるぜー神様よぉ。」 「この戦闘訓練では実戦と全て同じような体験が出来るように設定してある。」 「つまり?」とコトノハ。 「痛みも負傷も、戦死さえ起こり得ると言うことさ?」 「ヒッ…!」と怯えるアンジェラ。 「少し下品な言い方をすると“ポロリもある”かも知れないから気を付けたまえ。」 「ポロリ?」とルシファー=ゼロ。 「おいおいそこかよ。要するに服も破けるってこったろ?」 「そう言うことだ。だが訓練でも実戦でも、戦場から離脱すれば肉体や衣服の損傷等治る。勿論ラジエルの書のお陰さ?」 「そうそう。キミ(ゼロ)には“マイルーム”の案内をしてなかったね。 では改めて説明しようか♪キミ達堕天使の肉体は髪の毛1本に至るまで硬質化している。 その衣装も特殊な材質で出来ている。もし他の衣服に変えたくなったら衣服屋で購入して、マイルームで序でに容姿にもアクセントなんかを付けると良い♪」 「では我が子達、各々堕天使生活を楽しんでくれたまえ☆ さぁ、そろそろ訓練開始だ。」 ロキの言葉に皆が気を引き締める。 「アーーーーー…」 「ヒッ…!」 神々しくも何処か禍々しい、磔にされた人間を思わせる怪物が空間の真ん中に現れた。 無言で皆より1歩前に出るディード、ギル。そんなディードに胸をときめかせるカレン。 「下級天使、その名も“エンジェル”。 …と言ってもこれは模写のようなものだけれどね。 戦闘能力は今のキミ達と同程度。戦場で見付けたらバンバン狩って力を高めると良いよ♪」 「フゥフゥ…」 息を乱しながらライフルを構えるアンジェラ。 「良い心掛けだ♪ 戦場では見敵必殺。そうで無ければこちらが狩られてしまう。 とは言えあちらはソロ。こちらはチーム、何をするべきかは分かるね?」 「アンジェラ。大丈夫だ。俺達が付いている。冷静に行こう。」 「そうだ。近接戦闘は私達に任せてアンジェラは気ままに撃つくらいで良いだろう♪」 「ディード…コトノハ…フッフッ!」 ライフルを地面に突き刺し、頬をパチパチと叩くアンジェラ。そうして再びライフルを握る。 「では我が子達、健闘を祈るよ♪」 「任しときなぁ!雑魚狩りなら俺1人でも十分だぜ!」 「フッ…お手並み拝見と行こうか、ギル。」 「はぁああああああッ!!!」 思い切り跳躍し、大槍を振り下ろすギル。 「何!?」 だがその攻撃はエンジェルの頭から交差状に生えた腕に防がれた。 「ふぅうううううンッ!!」 真横からハンマーを全力で振るい、エンジェルを吹き飛ばすディード。 「ゼロ、銃撃だ。出来るな?」 「ぁ、ぁあ!」 「銃撃ならカレンだって出来ます!!」 「ギル、双方から挟み撃ちだ。今度はフォロー無しだぞ?」 「はいはいありがとうございましたぁっ!」 『ふっ…ふっ…はぁああああああッ!(オラッ!)』 全速力で駆け抜け、エンジェルの真横に迫る2人。 お互いに袈裟懸けをするように武器を振り、エンジェルの上半身を吹っ飛ばす。 2人の武器がぶつかり合って止まって、硬い握手を交わした…。
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