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…暗闇の中。1人の男が目覚めた。
「やぁやぁ我が子よ。気分はどうかな?」
男にまた別の男が問い掛ける。
──その男は体中に色とりどりのマフラーを巻いたような奇抜な格好をしていた。──
2人の男の歳は10代後半と言ったところか。
「貴方は…?」
男が奇抜な格好をした男に問い掛ける。
「我が名は“ロキ”。“閉ざす者”とも呼ばれているね。まぁそれは良い。」
「ンー。ワタシの問い掛けたのが先だったんだがね。」
所謂顔芸。
「調子はどうだい?我が子よ。」
「…分からない…。」
ロキの質問に男はそう答えた。
頭を押さえ、不安そうに瞳を揺らす。
「ハァー、記憶喪失か。
“生前”の記憶が欠落したまま堕天する。稀に…いや、良くあることか。」
本を開き、何かを閲覧したロキが本を閉じる。
「ではキミのことはこう呼ぼう。“ゼロ”と。」
「ゼロ…?」
「ルシファー=ゼロ。キミみたいな記憶喪失の“堕天使”をそう呼んでいるんだ。」
ここまで“闇の中”だの“生前”だの“堕天使”だの“ロキ”だの。
──常人なら疑問が起こるところであろうが、ゼロの頭はそれどころでは無い。全てが疑問に包まれていると言って良いからだ。
「勿論、名乗りたい名前が何かあるのならそれを名乗っても良いけどね?」
「…。」
静かに首を振るルシファー=ゼロ。
「では次に行くとしよう。」
「数いるルシファー=ゼロ達の中には戦いの中で生前の記憶を取り戻す者もいる。キミもそうであることを祈っているよ。」
「戦い…?」
「ああそうとも♪キミを待っているのは戦いの日々だ。」
「…待ってくれ。自分は…何も分からない。」
「キミは一度死に、“堕天使”として蘇った。キミに必要な情報はそれくらいだね?」
まだだ、とゼロが首を振る。
「いいや、キミの生前を説明してやる程ワタシは親切じゃないんだ♪自分で思い出したまえ。」
そこでロキはゼロに背を向け、一瞬振り返る。
「さあ行くよ?
キミは一度死んだ存在だ。戦わなければこの世界で生き残ることは出来ない。」
「戦わなければ…生き残れない。」
「サア、案内しよう。」
ロキの指す方に光が射し始めた…。
「キミと同じ“堕天使”の元へとね♪」
「…。」
──斯くして全てを失った男“ゼロ”はロキと共に堕天使と出会うことになった。
…戦い、生き残る為に。
彼を待ち受ける運命の歯車がゆっくりと回り始めた…。
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