コレクター

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「ねぇ? 私って綺麗?」    こくりと頷くあなたは、とても可愛らしい。  私のだした食べ物も、まるで子犬のように食べてくれる。   「ねぇ? 今年のクリスマスは何がいい?」 「そうだな、キミがくれたものなら、なんでも嬉しいかな」  なんて数ヶ月前には言っていたが、私は知っていた。  時折通りがかった、大型モールのショーウインドーに展示された高級ゴルフクラブにあなたの視線はくぎ付けなのが。  さくっと買ってしまえそうなくせに、趣味の物に関しては及び腰なところも可愛らしいと感じれる。  だから、今年はそれにしようかと迷ったが、なんだか見透かされているようで、ちょっぴり悔しい。  だけど、私って毎年手編みのマフラーも必ず添えているの、だって、ただの買ってきたプレゼントよりも温もりが違うでしょ?  私の手編みのマフラーは好評なの、みんな好いてくれていた。 「お待たせ」  クリスマスの雰囲気が漂いだしそうな街の雰囲気に、否応なしに心が躍りだしていく。  いつものように、仕事の帰り道に外車の高級セダンに乗った彼が待っていてくれた。 「今日はどこまで?」 「ん? そうだな、時計台なんてどうかな?」 「嬉しい。 あそこって、今の時期、とっても美麗なのよね」 「おいおい、ひょっとして、キミは別の人と行ったことがあるのかい?」  冗談ぽく、少し膨らんだお腹を撫でながら私に微笑みかけてきてくれた。  こちらも、少しだけ含みのある笑みで返すと、彼は車を走り出していく。  いつもより、ほんの少しだけ香水の香りが強いと感じた。  ぽわっと鼻先をかすめる臭いにむせ返りそうになる。 「あぁ、もうお終いなのね」 「ん? 何か言ったかい?」 「いいえ、なんでもないのただ、あなたのような魅力的な男性って損よね」  私が何を言っているのか理解できずに、時計台を求めて走っていく。  むせ返りそうな香水の匂いを飛ばすために、窓を少しだけあけると、晩秋独特の空気が入り込んでくる。    幾分か香水の香りが落ち着いたと思うと、ほらね。  やっぱりそう、だいたい私の鼻は当たる。 「違う女性(ひと)の香り」  ボソリと呟くが、私の声は窓から入ってくる風の音にかき消されていく。  
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