4人が本棚に入れています
本棚に追加
マフラーが完成した。
そして、初めてあの人をこの家に招待する。
今まで、外でしたか会わないようにしていたが、ある一定の資格があると、私の家に入ることができた。
彼は立派にその資格を有している。
クリスマスから二週間が過ぎ、年明けの慌ただしさの中、彼は高級なワインを片手に、私に会いにきた。
「いらっしゃい」
「ごめん、ごめん、出張が長引いたり年末年始で忙しくてね」
「いいの、だいたいみんなそうだから」
「みんな?」
「気にしないで、さ、上がってちょうだい」
「初めてだな、キミの家に来るのは」
キョロキョロと物珍しそうにあたりを見渡しながら靴を脱いで、コートを私に預けてくれた。
すうっと息を吸い込むと、そこには私が慣れ親しんだ男性の香りではなく、甘く桃のような香りがした。
「でも、今日で終わるからね」
雑にコートをハンガーにかけると、彼を室内に案内する。
最初はリビング、と言うよりも最初からリビングしか狙っていなかった。
「お、お洒落だね」
なんの断りもなく、ダフっとソファーに腰かけると早々に、ワインをあけようとしている。
私は急いでグラスとプレゼントを持って彼のもとへと向かった。
「はい、お待たせ、プレゼントがあるんだけれど、いま開ける?」
「いや、一杯飲んでからがいいな」
さして、興味がないように思えた。
彼の内心はさっさとお酒を飲んで、ヤルことやったら退散する予定だろう。
グラスを預けると、トクトクと紅い液体が注がれる。
「はい、どうぞ」
「いただくわ、ありがとう」
「いいさ、私が用意できるのはこれぐらいだから」
クイっとひと口飲むと笑顔を私にくれた。
「大丈夫よ。心配しないで、あなたがこの素敵なワイン以上に私を喜ばせるプレゼントを持っているから?」
「ん? なにを……。 うっ、はぁ……。」
「あら? 眠いでしょ? 無理なさらずに」
私は目の前で強烈な睡魔と闘う彼の横にいく。
「あが、なにを」
彼の言葉を遮るように、左手で瞳を閉じさせるとゴトンっと大きな音をたてて、グラスを倒しながら、横になって寝てしまう。
「クスッ、可愛い……」
最初のコメントを投稿しよう!