4人が本棚に入れています
本棚に追加
一人ワインを飲む、とびきりの上物に酔うのが勿体なく感じられた。
しばらくすると、彼が目を覚ましていく。
「おはよう」
「う、はぁはぁ、あ、頭がぁ」
まだ意識が朦朧としているようで、自分の置かれている状況が理解できていないようだ。
眠気覚ましに、グラスにたっぷりと残りのワインを全て注ぎ、彼の顔にかけてあげる。
「ぶわ! ぺっ! お、おい! キサマ! 何をするんだ」
一気に怒りの顔をする。 そんな顔、私に一度も見せたときがない。
ガタガタと体を強く揺さぶるが、身動きが取れないでいた。
「おい! 冗談のつもりなら、もうやめろ! 通報するぞ!」
椅子にガッチリと締め付けられ、恐怖と怒りに身を任せながら、ありとあらゆる罵詈雑言を私に浴びさせてくる。
「ねぇ、私はおはようって言ったの、なんで返してくれないの」
「はぁ! キサマ頭はおかしいのではないか⁉ この状況でどうやってそんなことが言えるか」
彼の首筋に鼻を近づけると、あの甘い桃の香りはしない。
ワインがほどよく邪魔な存在を消してくれた。
「これで、全ての資格が揃ったのね」
私は高笑いしながら、くるくると舞いプレゼントの袋から真っ赤な手編みのマフラーを取り出した。
「ねぇ、これ上手でしょ? かれこれ五回目なの、このマフラーを編んだの」
「な、なにを急に! とにかく! 離せ離すんだ!」
「クス、可笑しいの、ねぇ聞いていただける? 私ってどうしていつも一番になれないのかしら?」
「お、おい何を急に……」
戸棚に閉まってあるアイスピックを取り出して、彼へ近づいていくと、急にオドオドとし態度になった。
「かならず、泥棒猫が現れて私の大切な人を奪っちゃう、でもね、こう考えたの」
アイスピックを彼の首すじにあてると、悲鳴をあげそうになる。
それを無理やりテーブルに置いていた布をねじ込みガムテープで吐き出せないようにした。
「悪い泥棒猫さんは、いつでも現れる可能性があるけれども、だったら、私の大切な人を私だけのモノにしちゃえばいいんだって♪」
ドス。
床にアイスピックを投げると、木の床に突き刺さる。
「それでね、私の愛の籠ったマフラーを貰ってほしいの」
ヒラヒラとさせ、彼が必死に首を振りながら抵抗するも、その首にマフラーを巻きつけていく。
最初のコメントを投稿しよう!