コレクター

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 一人ワインを飲む、とびきりの上物に酔うのが勿体なく感じられた。  しばらくすると、彼が目を覚ましていく。 「おはよう」 「う、はぁはぁ、あ、頭がぁ」  まだ意識が朦朧としているようで、自分の置かれている状況が理解できていないようだ。  眠気覚ましに、グラスにたっぷりと残りのワインを全て注ぎ、彼の顔にかけてあげる。 「ぶわ! ぺっ! お、おい! キサマ! 何をするんだ」  一気に怒りの顔をする。 そんな顔、私に一度も見せたときがない。  ガタガタと体を強く揺さぶるが、身動きが取れないでいた。 「おい! 冗談のつもりなら、もうやめろ! 通報するぞ!」  椅子にガッチリと締め付けられ、恐怖と怒りに身を任せながら、ありとあらゆる罵詈雑言を私に浴びさせてくる。   「ねぇ、私はおはようって言ったの、なんで返してくれないの」 「はぁ! キサマ頭はおかしいのではないか⁉ この状況でどうやってそんなことが言えるか」  彼の首筋に鼻を近づけると、あの甘い桃の香りはしない。  ワインがほどよく邪魔な存在を消してくれた。 「これで、全ての資格が揃ったのね」  私は高笑いしながら、くるくると舞いプレゼントの袋から真っ赤な手編みのマフラーを取り出した。 「ねぇ、これ上手でしょ? かれこれ五回目なの、このマフラーを編んだの」 「な、なにを急に! とにかく! 離せ離すんだ!」 「クス、可笑しいの、ねぇ聞いていただける? 私ってどうしていつも一番になれないのかしら?」 「お、おい何を急に……」  戸棚に閉まってあるアイスピックを取り出して、彼へ近づいていくと、急にオドオドとし態度になった。 「かならず、泥棒猫が現れて私の大切な人を奪っちゃう、でもね、こう考えたの」  アイスピックを彼の首すじにあてると、悲鳴をあげそうになる。  それを無理やりテーブルに置いていた布をねじ込みガムテープで吐き出せないようにした。 「悪い泥棒猫さんは、いつでも現れる可能性があるけれども、だったら、私の大切な人を私だけのモノにしちゃえばいいんだって♪」  ドス。  床にアイスピックを投げると、木の床に突き刺さる。 「それでね、私の愛の籠ったマフラーを貰ってほしいの」  ヒラヒラとさせ、彼が必死に首を振りながら抵抗するも、その首にマフラーを巻きつけていく。
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