83人が本棚に入れています
本棚に追加
そう言葉を放った途端、今までうつむき気味だった大和が顔を上げ、強いまなざしで俺のことをにらんで来た。
大和は普段は儚げで中性的な美少年だが、感情が昂ると、その大きくて綺麗な瞳に負けん気の強さが現れる。
「伊央利が言ったんじゃないか……!」
「だから何を?」
「…………」
大和は答えず、ポロリと大粒の涙を零した。
「大和?」
俺は大和と同じ目線の高さに体を折ると、涙に濡れる弟の頬へそっと手で触れた。
途端にその手は思い切り振り払われてしまう。
「迷惑だと思ってるくせに優しくするなよ!」
「……迷惑?」
とうとう感情を爆発させた大和が俺に向かって叫んだ。
「俺、聞いてたんだから。伊央利がさやかさんに話してたこと」
「は?」
「大通りのハンバーガー屋さんで、伊央利、言ったよね。俺なんかいなければ良かったって……伊央利はずっと俺が邪魔だったんだ」
一瞬、大和が何を言ってるのか分からなかったが、すぐに思い当たる。
あのときファストフード店で言った言葉。
『俺はあいつがいなければ良かったのにって思う』
「違う、大和。あれはそういう意味で言ったんじゃない」
「もういい! 俺、部屋に行くから」
聞く耳を持たずソファから立ち上がろうとする大和の薄い肩を押さえつけ、至近距離で大きな澄んだ瞳を見つめた。
最初のコメントを投稿しよう!