傭兵・グウェン

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 心底嫌そうに鼻皺を寄せるロウウェルに、ククトは首を振る。 「良かったな。ハズレ」 「サマンディッド」  詐欺を働く子爵位を持つ人物を挙げるが、ククトは面白そうに首を振る。 「ハズレ」 「ドーラム」 「はいハズレ」  悪徳商売で借金に塗れ、一般階級に墜ちぶれそうな伯爵の名も外れた。  こうなってくると、もう一般人でも馴染みのある貴族はあまり居ない。あとはこの街の領主くらいのものだった。  そこでハタと気付く。  評判が悪い相手じゃなく、俺が苦労しそうな相手だから楽しそうなんじゃないかコイツ、と。 「……ソーレン」  どうか外れていてくれと願いながら口にすると、ククトの笑みが一層深まった。 「あったりい!」  頭の痛さを吐き出さんと、ロウウェルはため息を吐く。 「最近の中で1番お前を沈めてやりたい出来事だよ」 「ってもソーレン家は別に金払いも悪くねぇし、伯爵は領主だぜ。コネができる」  確かにメリットは多い。恩は売れるし、顔を覚えられればあらゆる事が融通される可能性もあるし、私兵の設立が義務の領主に気に入られれば、安定した職業の騎士団に入団できる可能性もある。 「因みに、護衛対象は誰だ」  そのメリットを帳消しにし、何ならデメリットの方の重しが大きいと感じる要因を聞き出そうと質問をぶつけるが、ククトは笑みを消して怪訝そうな顔をする。 「それがな、俺に話がきただけで誰が護衛対象とか言われてねえんだよな」
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