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それなら、とロウウェルは天秤の重しが僅かに軽くなった気配を感じた。
「なんだ、それなら家族の護衛じゃなさそうだな」
「いつも家族の護衛だと女って指定が入るもんな。
そうじゃなくても手出したら追放だってんだからキツイっての」
領主であるソーレン伯爵は、騎士団の充実の為護衛依頼や討伐依頼を定期的に出して、気に入った者を騎士団に引き抜いていく。
だが護衛依頼の条件は、受ける者を選ぶ内容なのだ。先ず女である事を条件とする依頼が多い。その次が老人だが、危険度の高い任務の場合年老いた冒険者では力不足だ。そんな時に若い世代の男女問わずに募集が掛けられるが、その競争率の高さと規約違反のペナルティの重さに、ロウウェルは受けた事がなかった。
家族愛の深いソーレン伯爵は、娘3人に奥方と、伯爵本人を除いて女ばかりの一家だ。その家族がもし荒くれ者で礼儀知らずの冒険者などのお手付きになったら。
即刻、この街を追放である。
「詳細は直接会って聞けって事か?」
「そう言うこった。
俺に直に誰か推薦してくれって言うくらいだからな、よっぽど騒がしい事になってんじゃねえの?」
ニタニタとするククトをぶん殴ってやりたい衝動を抑える。
「面白がってんじゃねえぞ。
兎に角、伯爵本人の依頼なら受ける。騎士団にゃ興味ないがな」
アリアナにど突かれて脱げ落ちたフードを、晒された口元を隠すように目深に被ると、ロウウェルは席を立つ。
「明日、屋敷に来いとさ。時間はこっちの都合で良いらしい」
最後に後ろ手に手を挙げて、傭兵ロウウェル・グウェンは宿屋を後にするのだった。
「……話がまとまったとこ悪いけど、片付けていいかしら」
「お、おう」
結婚したら確実に尻に敷かれるだろうなと、外で会話を耳にした傭兵は思うのだった。
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