お嬢様

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 どう言う事だと言う問い掛けは、扉の前で歩みを止めたアレマによって遮られる。  三度のノックの後、アレマは室内へ声を掛けた。 「父上、アレマです。  相談したいことがございます。お時間をいただけますか」 「入りなさい」  渋く重厚感のある声は、人を使う事に慣れ切った命令口調でこちらを促す。 「失礼します」  ドアノブがアレマの細く白い手に握られ、親指で突起を下され押されると、従順にその場から退いていく。  執務室なのだろう、扉の正面には使い込まれた濃茶の机が艶を放ち、その背後には大窓が控え、バルコニーに続いている。四角い部屋の左右には、壁一面の本、本、本。唯一飾り気があるとすれば、執務机と入口の間に据えられたテーブルと2人がけのソファが左右に一つずつ並び、その上に花が生けられた花瓶が置かれているのが硬質な雰囲気の部屋の角を丸めているような気がした。  執務机に齧り付くようにしていた男、アレマが父と呼んだのだから彼はソーレン伯爵家当主、ガレット・ルワンダ=ソーレンその人に違いなかった。  伯爵はアレマとロウウェルを見比べて意外そうな顔をした。 「狼人……その胸のタグは傭兵か?  ふむ、君は傭兵のロウウェル・グウェン殿か」  自己紹介するまでもないらしい。 「私のような手余し者をご存知とは。余栄の至り。」 「狼人は弁ずる言語が違うと聞くが、随分と流暢な喋りだ。  それで、私の娘と連れ立って現れるとは如何な用件かな?」 「御息女であるアレマ様の護衛を引き受けさせていただきたい。」
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