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寒がり
異達視点
「なー異達ィ」
冬は寒い。本当に嫌いだ。秋でさえ冬物を引っ張り出すのに冬になったら何物を出せば良いんだ???
そう寒さに凍えながら暇潰しに端末を覗いていた頃。
普通の人から見ても異様な薄着のままアイスをかじっている同居中、高校からの仲である羽奈多が背中に抱きついてくる。
「ん、」
「寒ィ?」
「くそ程寒い」
即答にも近くそう答えればゲラゲラと笑いながら
俺の肩に顎を乗せて端末に向けたままの横顔に
視線を向けているようで、ちらりそちらを見遣った。
「俺があっためてやろーか、」
痛々しくも見える耳のピアスを蛍光灯に反射させながら
悪戯っぽくも幸せそうな笑みを浮かべてそんなことを言う。
胸の締め付けられる感覚に浸りつつ重力に従い
さらさらと揺れる黒髪を指先で救い上げ、優しく口付けた。
「え、っお、…ぉう、」
「何だその反応、」
「や、いや別に…」
突然のことに驚いたのか、頬を赤く染め上げながら
顔を逸らす。
「羽奈多、」
「な、なんだよ…」
警戒したように顔を赤らめたまま此方に目線を寄越される。
「寒いからあっためてくれ。」
すると拍子抜けしたように間の抜けた表情になるも、
次には嬉しそうにはにかんで見せた。
「任せろ〜」
そう言いつつ今度は俺の正面に回り、俺より少しだけ大きい身体で抱擁される。
「あったけぇ?」
「ん、」
素っ気ないようでもあるが、俺自身も相当浮かれているようで、
思わず頬が緩む。
「よかった、」
先程羽奈多が口にしていたアイスは俺の設定したエアコンのせいで皿の上で液状になってしまって、
暑がりの羽奈多の背中はじわりと汗ばんでいた。
暑いなら態々こんな事をしなくてもいいのに、
と思う半分、
こんな冬の日々があるなら
冬も中々良いかもしれない。
なんて思う自分もいた。
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