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まぶた越しの光に目を覚ました瞳子は、目を閉じたまま掻き寄せた布団の感触に、ぴたりと手を止めた。
違和感だ。
だが、戸惑いも一瞬のことだった。
隣でまだ寝息を立てている恋人。瞳子はその人と昨日、二人の他には神父だけのささやかな結婚式を挙げた。クリスマスの過ぎた、静かな日のことだった。
そして、真っ白なウェディングドレスを二人で一緒に掛けて眠ったのだ。
しなやかな絹と、ところどころにあしらわれたレースによる、変化ある手触りを楽しむ。
真っ白い絹のそれを、まるでおくるみみたいだと瞳子は思った。生まれたばかりの『二人の人生』は、体温の移ったふわふわの愛の象徴に包まれている。
戸籍上では何も変わらない、二人の結婚だった。
けれど瞳子は満足だった。
ずっと大好きだった人と、憧れのチャペルで結婚式を挙げられたのだから。
このまま死んでもかまわないな。そう思った。そしてふたたび夢のなかへ……。
まどろみのなかで、ふいに声がした。
「おはよう!」
最愛の人が頬をつついてきた。
「──おはよ」
二人は目を合わせて、理由もなく笑みをこぼした。
ウェディングドレスが、肩の揺れとともにスルッと鳴った。
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