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“死ぬことはとてつもなく大冒険だ”
ピーターはそう言うけど、臆病な私はとてもそんな風には思えなくて。
「たぶん五年は生きられると思う。その後はわからない。切ってみないと何とも言えないけど」
生きることも女の子であることも、全部どこかで諦めようとしていた時――真己に出会った。生きたいと、そう思えた。
「……真己くんは、なんて?」
「話してない」
その瞬間、パン!と横殴りの痛みが私の頬で弾けた。
「弥夜子さんは卑怯よ……!」
優ちゃんに叩かれたのだと気づいたのは、目の前の燃えるような瞳に見据えられた時。
「何も知らない真己くんを、そんな手段で夢中にさせて。何も知らないままあなたを背負わせるなんて!」
叩かれた頬の痛みが胸を刺す。
「真己くんなら胸なんてなくても受け入れると思ったんでしょ!? よく物事わかんないから!!」
「……!」
思わず優ちゃんの肩を鷲掴んだ。震える指が食い込んでも、彼女は涙の滲んだ瞳で私を射抜く。
「訂正して……優ちゃん」
「嫌です……! だってあなたは」
「そこじゃない! 真己はなんでもわかってる!」
見開かれたつぶらな瞳に、堰を切ったように涙が溢れた。真己の為にこんなに真剣に戦ってくれる人がいる。
「昨夜だけ……一度だけ。もう会わないから」
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