25人が本棚に入れています
本棚に追加
信じよう。私もこの世界に愛されていると。
「あー、それと君。始末書をひとつ書きなさいね」
「は?」
その言葉がすぐには理解できなかった。
「始末書……え、何か私がミスを!?」
「ミスもミス、大ミスだ。忙しい朝っぱらに、取り押さえるのに医師まで動員させられた」
話が全く見えてこない。次の瞬間、再びドアが勢いよく開き、病室に飛び込んで来たのは。
「――弥夜子さん!」
「……っ!!」
自分の目を疑った。この病院に入院している事はおろか、働いている事も話していないのに。
「コラ! 呼ぶまで入るなと言っただろう」
「真己くんダメだよ。落ち着いて」
優ちゃんに腕を掴まれ、医師に羽交い絞めにされた真己が、それでもジワジワと近づいて来る。
「この青年が“弥夜子さん弥夜子さん”と外来受付で大騒ぎしてな。静かに話すという条件で連れてきたんだが」
「あたしが話したの弥夜子さん、全部。それでも真己くん、毎日あのベンチで……!」
待っていたんだ。あれから雪が続いているのに。
私は震える唇を噛んで、真己をしっかりと見つめた。
「聞いたなら、わかったでしょ」
「おっぱい……切るんですか、弥夜子さん」
「うん」
「死ぬんですか?」
「死なないけど、すぐ死ぬかもしれない」
絶句した真己から優ちゃんと医師がそろそろと手を離し、部屋を出て行く。
最初のコメントを投稿しよう!