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無理に聞き出すつもりはなかった。だが、友也が話したいのなら、話は別だ。視線で促すと、友也はぽつりぽつりと語り始めた。
おそらく誰にも相談できなかったに違いない夫婦のすれ違いは、凛太郎の予想を遥かに超えるほど深刻なものだった。
「郁は、昔から僕に不満があったみたいなんだ。多分、僕と結婚した頃から、ずっと……」
友也は肩を落として、悲しげに瞳を細めた。
「あの時、郁は僕と別れて、子どもを堕すつもりだったんだ。お互い若かったし、僕も就職が決まっていたから、僕の迷惑になるんじゃないかと思ってくれたみたいで。でも僕は、それだけはやめてほしいって、土下座して頼んだ。その時は郁も納得してくれて、倫を産んでくれたけど」
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