第一章

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言い当てられて、思わず箸が止まった。倫はしたり顔で笑っていた。憎らしいヤツめ。 それと同時に、人生最大の不覚となった出来事を思い出し、凛太郎の顔が歪む。倫が足をぶらぶらさせながら、にやりと笑った。 「最近は誰とも付き合ってないんでしょ。おれが家にいても、誰も訪ねてこないし?」 「だーっ! もう! お前はもう何も喋るな」 スプーンをテーブルに叩きつけて、倫の言葉をさえぎった。 人生最大の不覚。 それは、よりによって友也の息子に、ゲイであることがバレてしまったことだ。それまで倫は部活が早く終わる火曜と金曜しか遊びに来なかったから、水曜はちょっと油断をしていた。 その日、早めに仕事が終わって帰ると、セフレの男が家まで押しかけてきた。普通は追い返すのだが、仕事で行き詰まっていたこともあり、ドアの前で暴力的な口づけをかわしていたのを見られたのだ。よりにもよって倫に、だ。
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