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第三章
取引先の担当者が週末しか会えないと言うので、土曜日は強制的に休日出勤になった。会社近くのカフェで書類を取り交わし、今度飲みに行きましょうと軽く約束をしてからマンションに戻ったのは、昼の二時頃だった。
三階の角部屋で、灰色のドアにもたれて立っていた小柄な男に息がとまりそうになる。
「……やぁ、凛。ひさしぶり」
目を瞠ったままかたまっている凛太郎にも優しく笑いかけてくる友也に、一瞬、時が巻き戻ったのかと思った。まだ大学生の頃も、こうして友也は自分を待っていたのだ。
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