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教科書は、テレビの下のガラスの扉、雑誌の隙間に外からは見えぬようねじこんであった。
(倫め、.......わざとだな)
自分は部活で取りに行けないからと友也を来させたらしいのだ。この間、凛太郎の目を盗んで、こんな仕掛けをして行ったのだろう。全く気づかなかった。
「倫が入り浸ってるのに、挨拶もなしで本当に、ごめん」
「いや全然、かまわないよ。おれも気が紛れるし」
買ったばかりの黒いコーヒーメーカーに粉と保温ポットをセットしてスイッチを入れた。待つこと五分。できあがる直前、バリバリ激しい音をたてるのを友也に軽く謝りながら、ステンレスの保温ポットとマグカップ二つとミルク、そして友也のために砂糖も持っていった。
「あ、ごめん。凛。今は砂糖、控えてるんだ。健診で、ちょっとな」
そう言われて友也の体つきをみてみた。顔立ちは昔のままだったが、胴回りは昔よりは厚くなった気はする。それでも中年太り、とまではいっていない。十分に、イケてる父親だと思う。
それを口にすると、友也は本気で赤くなった。相変わらず、かわいい奴だと思う。
倫はしょっちゅう遊びに来るが、友也に会うのは、ほぼ二年ぶりくらいだった。事務系の仕事から、慣れぬ営業に異動になって、随分苦労していることは分かっていたので、凛太郎も自分からは連絡を控えていた。
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