第三章

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 郁は、実家の両親とは折り合いが悪く、子どもの世話もあまり頼めなかった。友也も新社会人になりたてで、家の方まで手がまわらず、結局はほとんど郁が子どもの面倒をみることになったらしい。 「郁も倫のことはちゃんとかわいがってる。でも、僕のことは許せなくなる時があるって」  そしてついに彼女にこう言われた。 『子どもの手が離れたら、私にはなにもなくなる。私はこんな何もできない女になりたくなかった。ちゃんと社会に出て、仕事もして、子育てと仕事を両立するような女になりたったのに、私には何もない。あなたが、そうした』  
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