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私が尊敬し、大好きだった古谷北斗は、もうこの世のどこにもいない。北斗に伝える感想も、早々に自分の可能性を潰して諦めてしまった彼にはもう必要無いだろうし、そもそもそれを伝えるのに費やす、私の時間も勿体ない。というか申し訳ないけど、あのときの古谷北斗の「暗転世界」の内容を、もうほとんど覚えていない。面白くも無く、またつまらないわけでも無い無味無臭の小説は、人の感情を揺り動かさないし、心に残り続けたりも勿論しない。
私が彼に思うのは、憎しみ? 怒り? 憐憫? ……ふふふ。良いぞ。生身の人間に直接ぶつけられない思考を原動力として、私は小説を書いている。あのとき北斗に告白できずに失恋した私は、もうとっくに古谷北斗より小説の方を愛しているし、それで良いとも思っている。それは強がりなんかじゃないし、多分どれだけ努力しても小説の神様と両想いになることは無いだろうけど、そもそも小説なんかを書く人間はどこまで行っても孤独であって、歩みをやめない限りはどこまでも進んでいけるはずだ。
ーーどうかそんなストイックな私の書いた小説が、パッチワーク丼なんかになりませんように。
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