補習(一日目)

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補習(一日目)

夏休み。周りの友達が部活やバイトに勤しんでいるなか、私、竹中小雪はやりたくもない補習に来ていた。はぁ、憂鬱だ。憂鬱すぎる・・。何が悲しくて休みを消費してまで勉強しなきゃいけないんだ。別に私は普段からここまで勉強が嫌いなわけではないのだが、今日はダメだ。全くやる気がでない。周りにいる私と一緒に補習をうけている人たちはほとんど男子だ。周りを見回しても話しかけられそうな子はいない。つまらないなと思いながら、私は大きなため息をついた。 ガラガラガラ そのとき、教室のドアが開いた。その人が入ってきた瞬間、私の憂鬱な気分は吹き飛んだ。その代わりに、なんというか、電撃みたいなものが私の心に走った。 「はい。授業始めまーす。姿勢、礼。」 鈴のなるようなそれでいて低めなきれいな声だった。 「まず自己紹介するね。」 「ウチの名前は桝澤敦子(ますざわあつこ)。この前の問答無用でやなざわって書いた人いたでしょー!桝澤だからね!覚えてくださいねー。歳は内緒です!よろしくね」 とても、かわいい人だと思った。その人、桝澤先生は肩までの髪を手で弄ぶような仕種をして微笑んだ。ふんわりと、名前もわからない花の香りがした。爽やかな、それでいて甘い先生に似合う香りだった。
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