<中編>

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『そうだなあ、俺は使ってみたいな。というか、見たいものがある』 『見たいもの?』 『そう。……由那の、子供時代が見たいって言ったら……怒る?絶対可愛いと思うんだけど』 『やだあ、やめてよ小さい頃の自分に嫉妬しちゃう!』  あの時、本当に――私の世界は、彼でいっぱいで。彼が全てで。だから本当にそんな、しょうもない会話の一つ一つが新鮮で喜びに満ちていたのである。  独占欲の塊だった――重すぎるくらいに。だから、子供時代の自分にさえ嫉妬してしまうというのは、嘘ではない。でも。 『好きな人のことは、何でも知っておきたいって思うのは……だめ?』  そうやってちょっと上目遣いに言う彼が可愛くて、愛しくて。少女のようにテンションをあげて盛り上がってしまったのも、よく覚えているのだ。本当に、幸せ以外の何物でもなかった。なんせそのあと彼は。 『でも、未来や過去に行って……行ったまま、なのは嫌だな。俺が生きていきたいのは、由那がいる“今”だから』 「……私も」  ああ、別れを告げられるかもしれないと思った時でさえ、こんな気持ちにはならなかった。きっと私は、心のどこかで“別れてもきっとあの人は私のところに戻ってきてくれるんだから”なんて慢心があったのだ。友人の意地悪にも気づかなかったくせに。本当のことを、自分でちゃんと探そうともしなかったくせに。  最後の最後で、あの人を信じようとしなかったくせに。 「私も……生きたいのは、徹さんがいる未来だよお……!!」  きっと今、どうしようもなくブサイクな顔になっている。私はあくまでただの人間で、魔法の力なんてものはない。こんな胡散臭い魔導書が本物だとも思っていないのに。  縋るように私は、その本に手を伸ばしたのである。お願い、時間を戻して――やり直しをさせて、と。瞬間。
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