2.思わぬサプライズ

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此処に来る前、あおちゃん達が住んでいたマンションを見上げた。 ちょっと前までは、あのマンションにはあおちゃんと京子さんが居てくれて、喧嘩する度に逃げ込んでいた。 あおちゃんは 「絶対、章三が悪いに決まってる!」 って言って、いつだって僕の味方だった。 京子さんは僕の話を黙って聞いてくれて、次の日には仲直りさせてくれていた。 あおちゃんがお客様用の枕を抱えて自分の部屋に行きながら 「蒼ちゃん、今日は一緒に寝ようね」 って言うのを、京子さんが呆れたように 「あおちゃん…。いつまでも蒼ちゃん、蒼ちゃんって…」 そう言って笑ってた。 狭いベッドに横になり、あおちゃんが僕に抱き着いて 「いつでも喧嘩して良いからね。そうしたら、こうして蒼ちゃんと一緒に寝られるから俺はラッキーだし」 と言って 「蒼ちゃん、大好き」 って受け入れてくれていた場所が今は無い。 暗く灯りの灯らない部屋を見上げて、急に孤独感に襲われた。 自分は、どれだけあの親子に救われていたんだろう。 「蒼ちゃん、蒼ちゃん」 子犬のように抱き着くあおちゃんの温もりが、香りがどれだけ僕を救ってくれていたんだろう。 悲しみと孤独感に、無意識に走り出していた。大好きな人の温もりが、香りが恋しかった。そして、田中さんが留守だった時、本当に怖かった。 普段は賑やかな街並みが静かに感じられて、世界中にたった1人、取り残されたみたいだった。だから、田中さんが駆け付けてくれた時、本当に嬉しかったんだ。 だから余計、今はこの手を離したく無いと思ってしまったんだ。
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